懲りない面々って誰のこと?
面倒くさいと思いつつ,かなり引っかかりを覚えた記事だったので愚直に猪突猛進してみよう.
CNETの半導体による復活という幻想と懲りない面々という記事について.この記事を書いている森さんという人はこの記事の冒頭で
「日本の産業は半導体で復活する」など、ウソも甚だしい。
と断言しているんだけど,その主張を裏付けるファクトなり説得力のある洞察を提示するには至らず,「デジタル三種の神器」というキーワードに単に噛み付いているだけ,という印象しか持てなかったな.
そもそもこの記事の批判対象がはっきりしない.「デジタル三種の神器」で「半導体で日本復活」をどこのどなたが唱えているのかをはっきり明示してもらわないことには,読者の私としては「なんだかなあ」と思う他はない.森さん,あなたは誰に対して憂いを抱いているの?
以前のエントリーで、「デジタル三種の神器」というフレーズは発売元のメーカー側の願望であって、消費者自身にとって必ずしも適切な表現ではないと明確に述べた。
とあるので,以前のエントリーっぽい記事を読んでみる.要約すると,デジタル三種の神器とされる「薄型テレビ・デジタルカメラ・DVDレコーダー」はリプレースを狙う既存の家電製品に比べて現在高価であり「圧倒的な価値訴求力を持っているかというと若干怪しいという気がする」ので三種の神器呼ばわりは違うだろ,という話みたいだ.
温故知新という古人の教えにしたがって,「家電 三種の神器」でぐぐってみよう.いろいろ引っかかる中で簡潔に説明してくれているここらへんで確認して「家電の三種の神器」について簡単に定義してみたい.三種の神器と呼ばれた家電製品は時代の変遷とともに変化していくが,共通項としては(1)その時点での消費者ニーズを強く満たしている製品であること,(2)庶民にとっての高嶺の花=あこがれの製品であること,があげられると思う.
奥行きのデカいCRTテレビ,期待通りの画が取れたか確認できず取り直しのきかないフィルムのカメラ,大きくてかさばるテープメディアの弱点を抱えるVHSビデオレコーダ.これら旧来の家電製品の難点を覆い隠すことはできないし,機会があれば買い換えたいと希望している向きも相当数多いかと思う.そんな人がどれだけいるかを定量的に示すデータを私は持っていないけど,メーカーの皮算用通りにいくかはともかくとしても利便性に問題を抱えている既存製品が順次「デジタル三種の神器」とやらにリプレースされていくのは流れとして想像しやすい.デジカメはすでに二束三文の値段でそこそこの画が撮れる物が手に入るし,薄型テレビやDVDレコーダーもいずれ価格破壊が起こって三種の神器でも何でもない当たり前の家電製品になっていくんだろう.
各人が好き勝手に生きている今の世の中で「家電製品の三種の神器」にこだわることはナンセンスだよなという感じはするんだけど,しかし森さんの「以前のエントリー記事」のどの辺りで,「薄型テレビ・デジタルカメラ・DVDレコーダー」がデジタル三種の神器と呼ぶには不適切なのか,その理由がさっぱり読み取れない.現時点での高価格という一見ネガティブさも,みんなの憧れの対象=三種の神器たりうるには重要な要素だし.ていうか,森さんの「家電製品の三種の神器」の定義が曖昧なので,何に・誰に対して批判しているんだかがそもそもよくわからないんだけど,
むしろ、前述したとおり、一種の集団的無意識が成しえた業である可能性があると思うのだが
これに対してだとしたらただの電波記事だぞ.
元の記事についての話に戻す.日本の産業が復活するかはともかく(笑),日本の半導体メーカーにとっては付加価値のあるシステムLSIの応用分野・売り込み先として,液晶・プラズマディスプレイやDVDレコーダーの市場は現在進行形で語れる市場であり,価格破壊が起こる近い将来に至るまで有望である,また価格破壊後の市場の勝者が誰になるのかはまったく不透明.というのが現在の私の認識.その認識は誤りである,と思わせるだけの説得力ある意見を,森さんの上記の2つの記事からは見出せなかった.
結局「デジタル三種の神器」の分野でも韓国・中国のメーカーには価格競争では勝てないだろうという悲観的な見方を表明しているだけ?DRAMの一件からの類推で言ってるんだとすれば,ラフすぎるよ.NECも山形工場を売却するこのご時世,日本のメーカーも生産拠点を海外に移行しているので価格競争で韓国や中国のメーカーが絶対的なアドバンテージを今後も持ち続けるとは考えにくいんだけど.
適切なマーケティングと将来の市場動向の分析により戦略を定めて有限のリソースを設計・開発に割り当ててユーザーに(できれば想定アプリ込みで)売り込んでいく.日本の半導体メーカーが生き残っていくには言うは易し行うは難しの苦行を愚直に続けていくしかないが,「デジタル三種の神器」はその一つの成果として捉えるべきなんじゃないか.その中で使われているチップって,「デジタル三種の神器」が登場するはるか前,DRAMの分野でコケてこれからは付加価値の高いチップをつくらなければ生き残れないという半導体メーカーの必死の決意で開発された代物なんだからさ.
最後に付け加えると,成果なのでつまり「デジタル三種の神器」は半導体メーカーにとってはすでに過去の出来事であり,幻想というならば過去に抱いた幻想というべきじゃないかな.もし,日本の半導体メーカーが幻想を抱いているとするならばまったく別の幻想であるはずであり,そうでなくちゃ困る(笑)

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